概要
はじめに
今回から3回に渡ってAC負荷アナライザの製作について紹介します。
| 公開/変更日 | 特記 |
| 24/12/5 | 初版公開 |
| 25/1/5 | ・字句修正 ・外部リンク追加 |
主な機能と測定項目
1.電力(P, Q, S)の測定:
- 有効電力 (P):負荷が実際に消費している電力。単位はワット(W)。
- 無効電力 (Q):負荷が生成する磁界などで消費する電力。単位はヴァール(VAR)。
- 皮相電力 (S):供給された全電力。単位はヴァルト(VA)。
- これらを使って、力率 (Power Factor) も計算できます。
2.高調波の測定:
- 交流電源や負荷の電流・電圧に含まれる高調波成分を測定します。これにより、THD (Total Harmonic Distortion) や特定の高調波成分(2次高調波、3次高調波など)の割合を把握できます。
- 高調波の影響は、機器の過熱や電力供給の不安定、設備の故障などを引き起こすため、これを監視することは非常に重要です。
3.電圧・電流の波形観測:
- 電圧と電流の波形をリアルタイムで表示することができ、負荷の挙動を直感的に理解できます。これにより、負荷の性質(線形負荷か非線形負荷か)や問題点(たとえば、サージや異常な波形)が特定できます。
4.効率(Efficiency)の測定:
- AC負荷アナライザは、負荷のエネルギー効率(有効電力と皮相電力の比)を測定し、効率の向上のための改善策を提案することができます。
5.電力品質(Power Quality)の解析:
電圧の瞬時変動、周波数変動、サージ、ノイズ、フリッカ(ちらつき)などを監視し、電力品質の問題を発見するために使用されます。
なお今回の製作物は国際規格IEC61000-4-30には対応していません。
IEC 61000-4-30は、電磁両立性(EMC)に関する国際規格であり、電力品質の測定方法を規定したものです。この規格は、電力システムで発生するさまざまな電力品質の問題を標準化された手法で評価し、一貫性のあるデータを提供することを目的としています。
AC負荷アナライザは交流100Vを扱い感電のリスクを伴います。
この記事を参考にして生じた損害等については一切の責任を負いません。
関連リンク
内部リンク
外部リンク
本記事の内容は、以下のサイトの記事を参考にして製作を進めています。
開発環境
| 項目 | 値 | リンク |
| 基板 | オリジナル基板 | |
| 統合開発環境 | MPLAB X IDE v6.20 | MPLAB® X IDE | Microchip Technology |
| コンパイラ | MPLAB XC DSC v3.10 | MPLAB® XC DSC Compiler | Microchip Technology |
全体ブロック図
以下にブロック図を示します。
交流電圧・電流を絶縁して計測、各パラメータを演算しPCへ送信。PCにて結果を表示します。
■簡易ブロック図

■詳細ブロック図
AC負荷アナライザの詳細ブロック図を示します。




ハードウェア
回路図
回路図を以下に示します。
※基板が到着してからミスに気づきました。絶縁型DC-DCコンバータの入力(IN)と出力(OUT)の方向を誤って接続していたことに加え、ICSPコネクタのピンピッチを2.54mmではなく誤って2mmピッチで製作してしまいました。以下に修正後の回路図を示します。

参考にしたchan様の回路では、AC100Vのニュートラルと回路のGNDの間に絶縁が施されていませんでした。この設計は、高い精度を実現しつつコストを抑えることができますが、デバッグ時にPC側と絶縁する必要があるなど、取り扱いが難しい点もありました。そのため今回は、絶縁アンプを使用して高圧側と低圧側を絶縁し、マイコンとPC側のGNDを共通化する設計を採用しています。
■Analog Input部
インレット側(CN3)は商用コンセントに接続し、アウトレット側(CN4)には負荷を接続します。
交流電圧は、抵抗分圧によってL(Live)側の電圧を1000分の1に分圧し、これを絶縁アンプに入力します。
絶縁アンプの入力範囲は±250mVのため、最大入力電圧は±250Vとなります。
交流電流は負荷を通過し、20mΩのシャント抵抗を経由してN(Neutral)に戻ります。負荷が±12.5Aの場合、シャント抵抗の両端には最大で±250mVが発生します。
今回使用した絶縁アンプは比較的低コストなTIの「AMC1200SDUB」を採用しました。以下の特徴を持っており、今回の用途には問題ないと判断しました。
入力された電圧は、1.29V(typ.)を中心に、8倍のゲインで増幅され、差動信号として出力されます。
・低オフセット誤差:最大1.5 mV
・低ノイズ:典型的に3.1 mVRMS
・低側供給電流が少ない:最大8 mA(5V時)
・入力帯域幅:最小60 kHz
・固定増幅率:8(精度0.5%)
・高い共通モード除去比:108 dB
・低側での3.3V動作
・認証されたガルバニック絶縁:UL1577およびVDE V 0884-10認証済み
・絶縁電圧:4250 VPEAK(AMC1200B)
・動作電圧:1200 VPEAK
・トランジェント耐性:最小10 kV/µs
・定格動作電圧での典型的な10年間の寿命(アプリケーションレポートSLLA197参照)
・広範囲の産業用温度範囲において完全に規定
出力された差動信号は7.2kHzのローパスフィルターを通過し、マイコンのAD差動入力に接続されます。カットオフ周波数を7.2kHzに設定した理由は、商用電源周波数の高調波を40次程度までフラットに保ち、かつ位相の回転を極力抑えるためです。
■CPU部
電圧・電流の差動信号はマイコンの2つのADコンバータにそれぞれ接続されます。また電圧側の正出力信号はアナログコンパレータにも入力され、入力信号の周波数を計測します。
その後CPU内部で各種演算を行います。
■USB – Uart部
演算した値はUSB-UartブリッジICを介し、PCへ送信します。
アートワークイメージと実物イメージ
アートワークのイメージを以下に示します。



基板はFusion PCBに依頼しました。基板代と送料で$9.89と日本円で1,500円程度という驚きの低コストで製作できました。
基板到着後に手実装した状態です。この時はDC-DCのミスに気付いていませんでした…。

Assyイメージ
ASSY図のイメージを以下に示します。

最後にASSYした実写真です。ケース加工がかなり適当になっています。3Dプリンタが欲しい…。


部品表
部品表を以下に示します。
上段が基板実装部品、下段が筐体部品・その他の部品です。

次回はマイコンのソフトウェアに関して記事にしたいと思います。
記事についての注意点
本記事は慎重に内容を検討し正確さに努めておりますが、内容に誤りがあったとしても、この記事を参考にして生じた損害等については一切の責任を負いません。


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